7月15日、聖スウィジンの日。
この日に雨が降れば、40日間雨が続く。
この日が晴れならば、40日間雨にならない。
こんな詩がマザーグースにあるそうです。
さて。
時は1988年7月15日、聖スウィジンの日。
大学の卒業式で友人たちとはしゃぐ中、エマとデクスターは出会います。
真面目で地味なタイプのエマと、人気者でおちゃらけたタイプのデクスター。
デクスターのほうはエマのことを知らなかったようですが、エマは秘かにデクスターに想いを寄せていました。
お酒の勢いなのか学生最後の思い出作りなのか、二人はエマの家に行き、一晩を共に過ごします。
そうして物語は、エマとデクスターの20年以上にも渡る「7月15日」を綴ってゆきます。
大学を卒業後、エマは作家を夢見つつ、ファストフード屋でアルバイトをしながら暮らしていました。決して優雅な暮らしとは言えません。
一方のデクスターは、裕福な家の出ということもあり、あちらこちらでふらふらと仕事をしたりしなかったり、恋人といちゃいちゃしたりいちゃいちゃしたり。
そんな正反対にも見える二人ですが、卒業式後の一件がきっかけで友情を育んでいった様子。
電話や手紙で相談したり愚痴を言ったり、励まし励まされたり、一緒に旅行に出かけて気晴らししたり。
そうして二人の「7月15日」とその友情は積み重なっていきますが、正反対の二人です、会えない時間がだんだんと二人の距離を引き離していくことになります。
さてさて月日は進み、エマは教師として勤めながら、恋人のイアンと一緒に暮らしていました。
一方のデクスターは、テレビ番組の司会として一世を風靡するものの、両親は番組を「くだらない」としてデクスターの活躍を認めてはくれず、また連日派手なパーティーで盛り上がる自堕落な生活を送る日々。
またも月日は進み、エマは「本当にイアンのことを愛しているのだろうか」と自分の気持ちがわからなくなりつつあり、またデクスターはというと人気に陰りが見え始め、酒に薬に溺れてしまうように。
そして来る1996年7月15日。
エマとデクスターはドレスアップして、久しぶりのディナーへと出かけます。
しかし、デクスターは常に上の空でエマの話をろくに聞いてはくれません。
変わってしまったデクスターに切なさを感じるエマ。
長年育まれてきた二人の友情は、この日の雨に――聖スウィジンの日に降る雨に、流されてしまうのでした。
……さすがにここから先は、実際に物語に触れていただきたいところです。
小説『ワン・デイ』、同名の映画『ワン・デイ』、どちらも等しく、わたしの大好きな作品です。
(このブログでも一度本文を引用しています)
ただ、時間のことを考えると、映画のほうがおすすめです。
小説は上下の二巻構成ということもあり、読むのに時間がかかってしまうかも。
加えて、小説作者自らが映画監督を務めているため、丁寧に丁寧に映像化がなされているので映画だけでもじゅうぶんに楽しめるかと。
(わたし自身、映画からこの作品を好きになりました)
また映画では、エマをアン・ハサウェイ(『プラダを着た悪魔』や『マイ・インターン』
)が、デクスターをジム・スタージェスが演じています。
『プリティ・プリンセス』『プラダを着た悪魔』にもわかるように、だんだんと垢抜けていく役を演じるアン・ハサウェイは本当に素敵なのですが、その魅力は今回のエマでも存分に発揮されています。
また特に注目してほしいのが、アン・ハサウェイとジム・スタージェスによる、大学卒業時点からの20年強の演じ分け!
エマにしろデクスターにしろ、その時々の悩み、苦労、喜びと共に、自然に自然に年を重ねていくのです。
映画のラストでは序盤の大学卒業時点のシーンが回想的に挟まれるのですが、その時ようやくはじめて「あっ、彼らは歳をとっていたのだ!」と気付かされるくらい、自然に自然に歳を重ねていくんです……演技力がすごい……
ちなみに小説ももちろんおすすめで、映画では描ききれなかった彼らの心情や状況が詳しく掘り下げられています。
二人の手紙のやりとりは是非小説でじっくり読むべし!
映画と小説だと、特にエマへの印象が変わるかな?どちらのエマも好きだけれど、小説エマのほうが人間味があるなぁと感じます。
冒頭にも引用した、7月15日の言い伝え。
この物語は7月15日を追ったものなので、必然、その時の天気も追うことになります。
さてはて、エマとデクスターの二人の人生は晴れるのか、雨が降るのか。
結末はあなたの目でお確かめください。
……あーっネタバレなしで話すの難しい無理無理!厳しい!
それでは。